異種用途区画とは?建築物における火災対策の知識を身につけよう!
突然ですが、異種用途区画という言葉をご存知でしょうか。あまり聞くことがない言葉ですが、建物を建築する際に重要な事柄です。大型のショッピングモールなどの商業施設はこの異種用途区画を設定する場合が多いです。
今回は異種用途区画について以外にも異種用途区画の注意点を紹介しています。「異種用途区画について知りたい!」という方はぜひ読んでみてください。
そもそも異種用途とは
異種用途区画を説明する前に異種用途について紹介します。異種用途とはどのような意味なのでしょうか。
簡単にいうと同じ建物に違うお店が入っている場合に、それぞれの建物の設置するものが違うということです。
商業施設で例えます。商業施設には飲食店、雑貨屋、洋服屋などたくさんのお店が入っているでしょう。すると、それぞれのお店の業種によって火災のリスクが異なるのです。
飲食店であれば、防火設備をしっかり設置する必要がありますが、雑貨店や洋服屋であれば、飲食店ほど防火設備をしっかり設置しなくても火災のとき対処できます。
もちろん防火設備はどのような形態であっても必要です。しかし飲食店並みの防火設備をすべての部分で整えると費用が膨大になってしまうため、一部のみを「異種用途」として設定することができるのです。
つまり、それぞれのお店の用途にあわせて火災などの災害が起こったときのため区画を分けて、被害と設備投資を最小限に抑えるようにします。
異種用途区画の基礎知識
異種用途区画は何のためにあるのでしょうか。基本的なことを確認しましょう。ひとつの建築物でも用途によって形態、利用時間、管理方法が違います。
もし火災が起こってしまった際はテナントに入っているお店用途によって煙の広がり方、燃えてしまうもの、避難方法が違います。
たくさんの人が利用する大型の建築物であればあるほど、速やかに対処するためにも区画を設定する必要があります。
異種用途区画に該当する場所は法令で決まっています。
・学校、マーケット、公衆浴場、劇場、映画館
・車庫があり、大きさが50㎡を超える部分
・百貨店、共同住宅、病院、倉庫として使われており、2階以上で200㎡を超える建物
百貨店やショッピングモールなどの商業施設だけでなく、学校や映画館、自動車車庫があるような建物でも異種用途区画を設定する必要があります。
次に異種用途区画を設定する際の区画方法を紹介します。法令では以下のようになっています。
・準耐火構造とした壁や床
・特定防火設備
・遮煙性能
令第112条第13項に規定されている区画方法で、区画する部分は壁や床を耐火構造する必要があります。特定防火設備は具体的には防火シャッター、耐熱版ガラスなどです。特定防火設備では火災が発生して、1時間以内にほかの場所に火を移させないようにするのが目的です。
異種用途区画を設定する必要がない場合もあります。どんな条件でしょうか。
・用途の管理者が同じであること
・利用形態がほぼ同じであること
・道路等から建物へ直接出入りできないこと
・用途の利用時間がほぼ同じであること
・自動車車庫、倉庫以外の用途であること
ショッピングモールでテナントの管理者が同じで同じ時間帯に営業していれば、異種用途区画を設定する必要はありません。大型のショッピングモールでたくさんのテナントが入っていて複雑になっている場合は異種用途区画を設定する必要があるかもしれないので、事前に申請先に確認するようにしましょう。
要注意!異種用途区画のポイント
異種用途区画には注意しなければならないことがあります。異種用途区画を設定する際に見落としがちなことについて説明していきます。
【共用部分】
ひとつの場所に複数の用途が共有していることは多いです。その際は共用している場所のどの場所を異種用途区画に設定するかによります。
例えば、事務所、店舗、共用場所がある建物の場合で説明します。3つの方法があります。
・事務所を用途に選んで、店舗と共用場所を区画する
・店舗を用途に選んで、事務所と共用場所を区画する
・共用場所を用途に選んで、店舗と事務所を区画する
注意点としては建物の構成や配置はたくさんの種類があり、すべてに適応されるわけではありません。そのため、複雑な構造になっている建物を計画している際は異種用途区画を考えるようにしましょう。
【ビルトインガレージ】
異種用途区画を設定する際、建物の一部に車庫が組み込まれているビルトインガレージのような駐車場も区画に含む必要があります。2階部分を店舗や住居スペースにすることで駐車場を確保しやすいのが魅力ですが、異種用途区画について確認しておかなければならないのです。
屋内に重なる駐車場は基本的に「異種用途区画」です。そのためビルトインガレージを検討する際には防火設備などもしっかり考慮しておきましょう。
まとめ
今回は異種用途区画について紹介しました。異種用途区画とは大型の建物などで異なる用途で同じ建物を利用している際に区画を設定することです。大型のショッピングモールで火災などが発生した際にお店によって煙の広がり方などが違ってきます。
異種用途区画を設定することで、防火設備を設定し、それぞれに役割を与えることで被害を最小限に抑えることが期待できます。異種用途区画を設定する必要がある場所は百貨店などの商業施設や学校、病院といった大勢が利用する大きな施設です。
異種用途区画の注意点としては共有部分がある際は、区画方法が複雑になってしまうことがあります。また、ビルトインガレージでは異種用途区画を設定することが見落としがちになってしまいます。建物を設計する際に異種用途区画を設定することを考えるようにするとよいでしょう。