バー、バルの開業資金と黒字経営を続けるための秘策について
これからバーやバルを開業しようとするあなたにとって開業資金は最も気になる分野ではないだろうか?
開業資金が把握できればどれだけのお金を調達すればいいか目処がつき、物件取得や内装工事についても具体的な行動が取れる様になる。
しかし、今まで従業員として働いてきたあなたとって、開業資金と言ってもピンとこないのが本音では無いだろうか?
今回はその様な問題を解決するために、アーキクラウドでの事例を踏まえながら分かり易く解説させて頂く。
開業資金がどの程度必要か算出してみる
それでは実際にバーやバルの開業資金を算出してみよう。開業資金は分類すると下記の3要素となる。
・物件取得費
・内装工事費
・開業費
この3つの費用を算出することで開業資金の全体を把握することができる。下記にそれぞれの項目について解説していく。
物件取得費とは何か?
物件取得費とはテナントとして入居する際に必要となる費用のことを言う。その中で最も大きな費用となるのが保証金だ。保証金は、家賃の支払い延滞や破損など、もしものことが起きた時のためにオーナーに預けておく費用だ。
テナント用物件の場合、家賃の6ヶ月以上が相場となる。もちろん最終的には返却されるものではあるが、退去時に必ず返却されるとは限らない。
物件によっては、退去後数ヶ月後や次のテナントが見つかるまでなど、借主側としては厳しい条件であることが多い。契約前に必ずチェックはしておこう。
続いて必要となるのが、初回家賃となる。初回家賃は、翌月の月額家賃と当月の日払い分を契約時に支払う形となる。ポイントは家賃発生日だが、一般的には、内装工事開始日となる。
つまり、工事期間中は売上が無い状態で家賃を支払わなければならないということに注意しよう。
但しオーナーによっては、店舗オープン日を家賃発生日としてくれることもある。もちろん人気物件の場合はそう上手くはいかないが。。しかし交渉する価値はあるので是非チャレンジして頂きたい。
続いて必要となるのが仲介手数料だ。家賃一ヶ月分を仲介会社に支払う形となる。これは住宅の賃貸と同じなので理解しやすいだろう。
物件取得費を算出してみる
それでは実際に物件取得費を算出してみよう。
<条件>
場所: 東急東横線中目黒駅徒歩8分
面積:10坪(33㎡)
家賃:20万円(坪単価2万円)
<保証金>
20万円×8ヶ月=160万円
<初回家賃>
20万円×1.5ヶ月=30万円
<手数料>
20万円×1.0ヶ月=20万円
物件取得費:210万円
物件取得費を抑える方法とは?
物件取得費を抑える方法としてまず考えられるのが、自宅で開業するという方法だ。しかし、これは積極的にお薦めはできない。
バーやバルの集客において最も重要なのは立地だからだ。家賃が発生しないからといって安易に自宅開業はしてはならない。集客が見込める立地を探してそこに店舗を構えるのがベスト方法となる。
上述した様に、家賃発生日をできるだけ遅らせること、つまり契約日から店舗のオープン日までの間をできるだけ短くすることが最も効果的だ。
また、月額家賃についても家賃交渉は必ず行う様にしよう。しばらくの間、空室が続いている物件であれば、数千円レベルの値下げに応じてくれることは多い。
内装工事費とは何か?
内装工事費とは内装の仕上げ工事、空調や照明などの設備工事、その他カウンターや棚などの造作工事など、内装工事業者に発注する工事費用や家具などの什器類のことを言う。
開業資金に占める比率が最も高いため、この費用次第で今後の経営も大きく変わってくる重要な項目となる。バーやバルの場合、一般的には、坪単価30万円〜50万円程度が相場となる。
内装工事費を算出してみる
上記の条件で内装工事費を算出してみる。内装工事にはスケールメリットというものがある。面積が大きければ大きいほど、坪単価は安くなるが、逆に面積が小さくなれば坪単価は高くなる。
今回は10坪という比較的小さい物件でのシュミレーションのため、坪単価は45万円という設定とした。
<条件>
面積:10坪(33㎡)
10坪×45万円=450万円
内装工事費:450万円
内装工事費を安くする方法とは?
内装工事費を安くするための方法として最もポピュラーなのが居抜き物件を活用することだ。厨房機器や空調、照明など、既存の設備機器を利用することができれば、その分の工事費用が不要となる。
しかし、気を付けなければならないのが譲渡料だ。譲渡料が必要な場合、残置された設備がその金額に見合うものかを判断する必要がある。すぐに壊れて使えなくなってしまうものであれば居抜きのメリットは無いと言っても良いだろう。
しかし、経営者であるあなた自身でそれを判断するのは少し荷が重いはずだ。専門家である内装工事業者に同行してもらい物件選定をするのがベストな方法と言える。居抜き物件については下記記事を参照頂きたい。
続いて、複数の業者で見積もり比較をする方法があるが、実はこれが最も効果のある方法だ。競争原理を働かせることで、業者は最大限努力した見積りを提出してくれる。
公共事業や大企業の建築工事の殆どは入札によって決定されているのもこの方法が工事費用を下げるのに最も適しているからだ。弊社の見積比較サービスを利用して頂いて通常坪単価30万円以上かかる工事が坪単価10万円台まで下がった事例もある。是非とも活用頂きたい。
開業費とは何か?
開業費とはバーやバルをオープンする際に必要となる備品やその他経費のことを言う。具体的には家具や厨房設備費、調理器具、従業員のユニフォームなどがそれに当たる。
その他、販売促進費としてチラシの作成や求人広告、ホームページの作成も必須となる。開業費の個々の項目は開業資金全体に占める割合は小さいが、全て合計すると意外と大きな金額となる。また項目も多いので見落としがちなところがあるので注意をしたい。
開業費を算出してみる
それでは実際に開業費を算出してみよう。
厨房設備費:100万円
家具:50万円
調理器具:20万円
食器、備品:20万円
ユニフォーム:10万円
ホームページ作成費:20万円
チラシ作成&配布:5万円
求人広告:5万円
開業費合計:230万円
開業費を安くする方法とは?
開業費を安くするためのポイントは厨房機器や家具だ。これらは内装工事費に含めることが可能だが、内装工事業者の経費が乗ってしまい高くなってしまう。必ず経営者であるあなた自身で購入する様にしよう。購入後の配置などはメーカーで対応してくれるので、内装工事業者と調整の上進めるのが良いだろう。
バー、バルの開業資金の合計を算出する
上記シュミレーションよりバー、バルの開業資金の合計値を算出する。
物件取得費:210万円
内装工事費:450万円
開業費:230万円
開業資金:880万円
バー、バルを開業後、黒字経営を続けていくための秘策とは?
バーやバルの開業後黒字経営を達成するために必要なことは何か?それは目標利益を定めることだ。例え黒字であっても利益が僅かであれば納得はできないだろう。
経営者である以上、最大限利益を伸ばしたいと誰もが思う筈だ。飲食店の一般的に純利益は売上高の10%程度と言われている。
しかしバーはアルコール類の提供がメインのため、利益率は高い。従って今回は、売上高に対して15%の純利益を確保することを黒字経営と定義して、シュミレーションを進めていく。
まずは固定費を把握しよう!
固定費とは毎月必ず支払う固定の支出の事を言う。この金額がこれから行うシュミレーションの基礎となる。固定費はキャッシュ・フローを伴うものと、伴わないものの2種類がある。前者は毎月の家賃と毎月の支払い利息がそれに当たる。後者は減価償却費のことを言う。今回の条件を基に算出してみよう。
<固定費>
キャッシュ・フローあり
家賃:20万円
キャッシュ・フローなし
減価償却費:10万円
固定費合計:30万円
目標売上高を算出する
固定費の逆の概念が変動費だ。これは毎月変動する支出のことで、例えば原材料費や人件費、販売促進費、水道光熱費がそれに当たる。この変動費率と固定費がわかると目標とする売上高を算出することができる。算定式を下記に記載する。
目標売上高=固定費÷(1ー変動費率)
バー及びバルの場合、売上に対する固定費は15%程度が理想となる。変動費は売上から固定費を引いた数値となるので85%となる。上記式に当てはめると、30万円÷(1−0.85)=200万円が目標となる売上となる。この売り上げの内訳は下記の様になるはずだ。
売上高:200万円
固定費:30万円
変動費:140万円
純利益:30万円
※30万円の利益を達成するためには、変動費を140万円に抑える努力をしなければならない。
200万円の売上高を達成するためには?
それでは目標売上高である200万円を達成するためには何をすれば良いのだろうか?そのために回転率を検討する必要がある。下記条件にて検討を進めてみる。
営業日:毎週月曜日休業
営業時間:18:00〜3:00(計9時間)
顧客単価:3000円
200万円÷24日÷9時間=0.925万円/時=9250円/時間
9250円/時÷3000円/人=3.086人/時
つまり1時間当たり3〜4人の回転数となる。
この回転数を目指して、客席のレイアウトやメニュー構成や価格を設定していくことになる。
目標となる売上が達成できない場合の対策とは?
開業後、最初に設定した売上目標が達成できないことは良くあることだ。その様な時にどの様な対策をすれば良いのだろうか?下記にバー、バルの売上改善のための対策を記載するので参考頂きたい。
ロスを徹底的に排除できているか?
原材料のロスは最も改善がしやすい項目の1つだ。特に新規経営者の場合、その辺りの感覚を掴むまでに時間がかかるため最初に陥りやすいポイントと言えるだろう。
仕入れのロスは思っていたより注文がなかったために起こる現象だ。3ヶ月程度営業を続ければメニュー毎の注文数が把握できるので、それと合わせてフリージングなどの管理知識を取り入れることで、ロスは徹底して排除しよう。
開業時間は適正か?
開業前の開業時間設定はいわば想定での設定でしかない。開業後少なくとも2ヶ月程度は開業時間のテスト期間と考えよう。9時間程度営業すれば、時間帯により来客数の違いは必ず出てくる。来客数が多い時間帯に絞って営業をすることで、人件費を抑えることができる。
人件費は適正か?
人件費には正社員とパートに分類される。当然のことではあるが正社員の人件費はパートより高い。しかし間接人件費を見てみるとさらにそれば理解できる。
間接人件費とは給与以外の交通費や社会保障費や賞与、退職金などがそれに当たる。正社員の場合間接人件費比率は給与の1.4倍程度であるが、パートの場合は1.1倍程度と明らかな違いがある。
今の時代、パートやアルバイトでも正社員並みの業務をしてくれる人はたくさんいるので正社員をできるだけ雇わないことが経営改善のポイントでもある。
最後に
バー、バルをこらから開業しようとするあなたが最も知りたい開業資金と、黒字経営のためのノウハウにつて今回解説させて頂いた。前述した通り、バーやバルは飲食店の中でも利益率が高いジャンルの1つだ。しかしそのためには、それなりの付加価値が必要なことは言うまでもない。メニューはもちろんのこと、お店のデザインや雰囲気、バーテンダーの接客など、総合的なレベルが高くなければ決して大きな利益を得ることはできないだろう。今回の記事を参考に是非、利益の上がるバー、バルを開業して頂きたい。