美容室を開業するには?開業に必要な10の流れを徹底解説
開業に必要な10の流れを徹底解説 美容室の開業を決意したときに、まず疑問となるのが「どういった手続きが必要なのか」ではないでしょうか。
物件や設備機器、メニューの決定、内装工事などといったおおまかなイメージはあっても、具体的な流れについての知識は持っていない人も多いはず。
ここでは、美容室開業の流れを10の段階に分けて詳しく紹介していきます。
目次
【その1】イメージを膨らませる
美容室開業に向けての具体的な行動をスタートする前に、まずは「どんな美容室にしたいのか」というイメージを膨らませましょう。
世の中には「悩むよりも行動」という格言があるため、頭の中であれこれと考えを巡らせるよりも行動しながら考えたほうが良いと思う人もいるかもしれません。
しかし、美容室の独立開業を成功させるためには、それを始める前に抜かりない計画を立てておくことが重要です。
そして、理想の美容室のイメージを詳細に思い描くのは、計画の第一歩といえます。
つまり、イメージも成功のためには欠かせない行動の1つなのです。
しかし、独立・開業の流れについて知識がとぼしい状態で、具体的なイメージを思い描くのは難しいでしょう。
ですから、イメージと同時進行で「情報収集」にも力を注がなければいけません。イメージを膨らませる範囲は多方面にわたります。
独立開業後の収入や自分自身の生活から、「内装」「雰囲気」「スタッフの働き方」など、さまざまな面において自分の理想を詳細なイメージに反映させるのです。
そして、そのイメージを実現するために必要な予算額や店舗の立地条件、必要設備にメインとする客層などの具体的な情報を集めましょう。
【その2】コンセプトの決定と計画の立案
理想とする美容室のイメージが固まったら、さらに具体的な準備に移ります。
まずは、事業の核となる「コンセプト」の決定です。
コンセプト決定においては、美容室としての理念や、事業の展望、メインの客層にスタッフの行動指針となる目標、そして、地域やお客様にとってどのような美容室でありたいかなどを多角的に検討します。
美容室としての理念と、事業としての具体的な目標をすり合わせてコンセプトの大枠を決めましょう。
最初にコンセプトを決めておくことで、それを実現していくための行動指針や教育方針を逆算的に導き出せるのです。
高い技術だけをお客様に提供できるだけで良いのか、それとも、お客様にとってリラックスできるような癒しの空間も提供したいのかなど、イメージとコンセプトによってはその後の計画や行動が大きく変わってきます。
続いての準備は「資金計画」です。
開業資金として必要な金額を把握することで、受けるべき融資額が決まってくるため、資金計画は慎重に立てなければいけません。
また、資金計画においては、開業時の資金だけでなく開業をスタートしてからの収支バランスまでをも含めて検討する必要があります。
毎月の収支を黒字に持ち込むために要する収益や、赤字スタートから黒字に転化させるまでの資金のやりくりなど、あらゆる状況を想定して計画を立てましょう。
美容室の開業資金は、物件の取得費用、内装工事費、宣伝費用などで1000万円ほどが相場だとされています。
物件の選び方や内装のグレードなどによって実際にかかる金額は変わりますが、おおよその相場を把握しておくことも計画段階においては重要です。
また、開業後に毎月かかるであろう光熱費や人件費といった毎月の固定費、ローンの支払い、生活費などの合計を算出しておきましょう。
それをもとに、毎月の経営を黒字化するために必要な収益額をあらかた計算します。
開業直後からすぐに黒字経営というのは難しいとされているので、赤字の期間を乗り切るためにプールしておくべき金額も把握しておく必要があるでしょう。
資金計画を立てるのと同時に、事業計画の作成も始めます。
事業計画は、簡単にいうと美容室としての目標を達成していくためにとる行動を具体化した文書です。
事業内容に始まり、客単価から予測される売り上げ、集客率、収支の予測に達成計画などを、第三者目線から見てもわかりやすく作成しましょう。
事業計画は、美容室開業の要所で重要な役割を担っています。特に、金融機関に申し込んだ融資が承認されるかどうかは、事業計画の内容にかかっているといわれるほどです。
また、スタッフに事業計画を読ませることで美容室の理念、目標が伝わり、スタッフと経営者との間に一体感が生まれやすくなります。
開業後も定期的に事業計画を読み直すことで、経営の問題点や方向性にいち早く気づき、事業計画に沿ったかたちへの立て直しが可能になるでしょう。
また、以上の準備と並行して、開業する地域を絞り込みます。
地域の人口の伸び率、主要集客施設の有無、交通量などから多角的に検討し、開業にふさわしいエリアを絞り込みましょう。
単純に人口が多いエリアが開業にふさわしいとはいえません。
なぜなら、人口が多い都市部などはそれだけ美容室の数も多いため、業界的には激戦区といえるからです。
人口が多いイコールお客さんの数も多いはず、と決めつけて適当に探した物件で開業するのはおすすめできません。
「ファミリー世帯と単身世帯のどちらが多いのか」「駅や大型スーパーは近くにあるか」「どういった目的の人が集まる地域なのか」など、美容室経営に適した条件がそろっているかについて十分なリサーチを行いましょう。
【その3】資金の調達
資金計画の作成が終わったら、実際の開業資金調達に動きましょう。
金融機関などからの借り入れによって調達すべき資金の目安は、一般的に、開業時にかかる資金の5割程度だとされています。
つまり、開業資金として1000万円が必要ならば、そのうちの500万円ほどは自己資金でまかない、残りの部分を融資などで調達するのが経営の観点から望ましいということです。
美容室の開業資金を調達する方法を、いくつか紹介しましょう。
1つ目が「国や地方自治体からの助成金」を利用する方法です。助成金は国や地方自治体から支給される支援金で、返済不要という大きなメリットがあります。
ですから、美容室開業資金を調達するときには、真っ先に検討したい方法といえるでしょう。ただし、助成金を受けるためには、国や地方自治体が定めた条件を満たし、かつ申し出期間内に申し込みを行わなければいけません。
助成金を利用するなら、まずは利用条件に合致するかを確認し、申し込み期間を意識したスケジューリングを行いましょう。
2つ目の資金調達方法は、金融機関からの融資利用です。有名どころでいうなら、「日本政策金融公庫」の「新規開業資金融資」がおすすめだといえます。
日本政策金融公庫は、国の政策を実行するために設立された特殊法人です。
ですから、民間金融機関に比べると金利が安めで、審査基準も厳しくないというメリットがあります。
助成金ではなく、金融機関からの融資を受けるのであれば、まずは日本政策金融公庫の新規開業資金融資を検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、新規開業資金融資を利用するためには、いくつかの条件をクリアしなければいけません。
たとえば、国の政策を背景とした「雇用創出のための事業を始めようとしている人」などといった条件です。
ですから、まずは日本政策金融公庫のホームページで、自分が利用可能かどうかを確認しましょう。
また、利率などの詳細条件についても申込者ごとに設定されるため、自分の借り入れ条件を確認するためにも、一度相談してみてはいかがでしょうか。
【その4】テナントを探す
資金調達のめどが立ったら、つづいて物件探しに入りましょう。最初に決めたコンセプトやターゲット層を参考に、条件を満たす物件を探します。
ネット上の物件情報サイトや、現地の不動産仲介業者の活用がおすすめです。
物件選びは、美容室開業における重要なステップですが、時間をかけすぎるとスケジュールにずれが生じるおそれがあります。
ですから、物件については「これだけは譲れない条件」をあらかじめ決めておいて、それに適した物件を絞り込んでいくスタイルが効率的です。
物件の立地は、集客率に大きく影響します。
たとえば、同じビルでも大通りに面した1階と看板でしか存在を確認できない高層階では、人目にふれる機会がまったく異なるのです。
ただし、そういったメリットやデメリットを反映して家賃も1階が高く、高層階が安めに設定されていることが多いでしょう。
家賃は毎月の出費なので、無理をして高い物件を選ぶのは考え物です。
また、人通りの多い道沿いには、すでにライバルの美容室がいくつも並んでいることがあります。
美容室の数の多さは競争の激しさを表しているので、敬遠したくなる人もいるかもしれません。
しかし、美容室の数が多くてもそれを上回る人通りがあれば、十分に採算がとれるケースもありえます。
ですから、先述した通りの、多角的な地域の分析が重要なのです。
また、「居ぬき物件」と「スケルトン物件」のどちらを選ぶのかも重要なポイントでしょう。居ぬき物件では、以前にその物件に入っていた美容室の内装や設備などをそのまま引き継ぐことができます。
スケルトン物件とは、一から内装工事や設備を購入するなどして店舗を作り上げていく必要がある物件です。
居ぬき物件を選ぶことで内装工事や設備投資にかけるお金が少なくなり、開業資金全体の大幅な節約が可能になる場合もあるでしょう。
また、居ぬき物件はスケルトン物件と比べて内装工事期間も短くすむなどのメリットもあります。
ただし、居ぬき物件にデメリットがないわけではありません。
設備が残っていなかったり、設備を使用するのに前の所有者の承諾が必要だったりするケースも多いのです。
また、立地が悪くて流行らなかったために撤退したという裏事情もあるかもしれません。
さらに、前の美容室の悪評が高かった場合、それにひっぱられて自分の店のイメージまでダウンしてしまうおそれもあります。
ですから、居ぬき物件の金銭面におけるメリットだけに注目しすぎず、居ぬき物件ならではのデメリットもしっかりと理解したうえで物件を探しましょう。
【その5】設計・施工会社の選定と依頼をする
物件が決まったら、内装工事の段取りをつけます。まずは、設計会社や施工会社を選びましょう。
いくつかの設計・施工会社をリストアップして、それぞれの設計例などを見せてもらいます。それによって、自分の理想とする雰囲気を実現してくれそうな会社を絞り込みましょう。
また、物件を選ぶよりも先に設計・施工会社を決めた場合であれば担当者にお願いして、検討している物件の内覧に同行してもらうことをおすすめします。
そうすることで、物件選びに設計やデザインのプロ目線の意見を取り入れることができるため、より条件の良い物件に出会いやすくなるのです。
また、設計・施工会社を選ぶときには、コミュニケーションのとりやすさも判断基準にしましょう。
いくら素晴らしい技術を持っていても、こちらの意図やコンセプトをくみ取ってくれなければ意味がないからです。
また、見積もりについて明確に説明してくれるかどうかも重要でしょう。
見積もりの見通しが甘かったために追加工事が必要になり、思いもよらない費用が発生したというトラブルもありがちです。
ですから、見積もりの根拠に追加工事の可能性の有無など、相談の段階で生じた不明点や疑問点は余さず質問して、不安のない状態で内装工事の着工を迎えましょう。
【その6】導入機器や備品の購入をする
続いては、美容室で使用する機器や備品の購入です。
必要となる機器の種類や数は美容室の規模などによって異なるでしょう。
コンセプトや事業計画を十分に踏まえたうえで、目標を達成するために必要不可欠な機器選びから始めることをおすすめします。
最低限の機器や備品を選んだあとに、オプションとして導入したい機器の検討に入るのです。
また、メインのターゲット層の分析から、その客層を取り込むためにどういった機器や品を備えておくべきかを考えましょう。
美容室の専門機器は高額なものが多く、特に新品でそろえようとすると数百万円単位での出費になるのが一般的です。
また、耐用年数や耐久性を考慮すると、数年ごとの買い替えを要するでしょう。
ですから、機器類に多額の予算を投入するのはできるだけ避けたいという人も多いかもしれません。
たしかに、新品ならではの清潔感や機能性の高さはメリットですが、予算的に厳しいのであれば中古品やリースを利用するのも良いでしょう。
中古品は安価さが魅力ですが、新品に比べると清潔感や使用感で劣るというデメリットがあります。
美容室は清潔感が求められる場所ですから、そういったデメリットは集客に悪影響を及ぼしかねません。
ですから、すべてを中古品でそろえるのではなく、新品と中古品をバランスよく取り入れることで、双方のメリットを効率的に得ることをおすすめします。
リース契約というのは、言いかえると賃貸借契約のことです。リース会社から必要機器を借り入れ、その賃料を支払っていきます。
リースを利用することで、機器にかける初期費用を格段に抑えることができますが、契約期間の縛りや期間中の解約の違約金などの注意点もあるので、事前に契約内容をしっかりと確認しておきましょう。
【その7】サロンメニューを決める
次は、美容室で提供するメニューとその価格を決定します。
決定の指針となるのは、やはり店のコンセプトおよび事業計画の内容です。
メインターゲットである客層の集客力を上げるためには、どういった技術に力を入れるべきかなどを検討しましょう。
また、地域、特に近隣にある店舗のメニューや価格帯の研究も必須です。
競争力をアップするためには、技術だけでなく価格面にも気を配らなければいけません。
技術に自信を持った強気の価格設定も1つの経営戦略といえますが、設定価格が地域の相場とかけはなれすぎているのは考えものです。
また、クーポンによる値下げについても考えなければいけないでしょう。
というのも、クーポンは美容室にとって諸刃の剣だとされているからです。クーポンで料金を下げることで、集客率はアップするかもしれません。
しかし、クーポンによるお得な料金が浸透してしまうと、正規料金では集客しにくくなるおそれがあるのです。
【その8】美容師やアシスタントを雇用する
小規模だから自分1人で運営していく予定といっても、いつ手が足りなくなるかはわかりません。
そうなったときに焦らないためにも、たとえ開業当初にスタッフを雇用する予定がなくても、スタッフを雇用した場合の教育方法や雇用形態について検討しておくことが重要なのです。
スタッフを募集する方法は、地域の情報雑誌に載せたり、インターネット上で応募をつのったりとさまざまです。
就職情報サイトには美容業界の就職に特化したものもあるので、広範囲で募集をかけたい場合に利用するのがよいでしょう。
そして、スタッフの教育段階において欠かせないのが、コンセプトと事業計画といえます。
コンセプトと事業計画を理解してもらうことで、理想の美容室のイメージを共有しやすくなるからです。
また、事業計画の内容が具体的であればあるほど、スタッフ自身が「店舗にとってベストな行動」を考え、それを実践するための指針としても役立つでしょう。
【その9】開業手続きの申請をする
美容室を開業するときには、さまざまな届けや申請を提出しなければいけません。
たとえば「保健所」に対しては、開店の10日前までに「美容院開設に関する申請」をします。
そして、内装設計の段階では担当の消防署に相談して、指導を受ける必要があるのです。ほかにも、開業後1カ月以内に税務署へ開業届を提出するなど、忘れずにすべき手続きは多岐にわたります。
従業員を雇用する場合は、上記の例に加えて、さらに多数の申請や届け出を提出しなければいけません。
従業員が入社したあと5日以内を期限とする、年金事務所への届け出がその一例です。
ほかには、労働保険の手続きが必要になるでしょう。
また、法人化する場合の定款の作成、登記の申請など、開業のスタイルによって作成書類や申請の手続きも変わってきます。
スケジュールがずれたり、後になって問題が出たりすることのないよう、申請先や必要書類、申請期間はもらさずにチェックしておきましょう。
【その10】宣伝活動をする
前途洋々のスタートをきるには、美容室のオープンを広く知ってもらうための宣伝活動が必須です。
周辺の住居にポスティングしたり、SNSやブログを活用したりして、できる限りたくさんの人に知ってもらう機会を作りましょう。
ポスティングは、開業地域に住む人に美容室のオープンを知らせるのに有効な手段です。
しかし、一軒一軒をまわる時間と手間、そしてチラシの印刷費用がかかるのが難点といえるでしょう。
SNSでの発信は多くの人に知ってもらうチャンスで、費用や手間がかからないのがメリットです。
ただし、インターネットで検索したときに、検索結果の上位に表示されるための策や知識を持っておく必要はあります。
両方のメリットとデメリットを考慮しつつ、効率的かつ経済的な宣伝活動を心がけましょう。
流れに沿ってスムーズに美容室を開業しよう
理想とする美容室の開業を実現するためには、さまざまな準備が必要です。
人によっては、途方もなく複雑で時間のかかる手続きだと思えるかもしれません。
理想の美容室をイメージしている段階では、夢が膨らんで期待に心躍らせていても、資金計画や事業計画などで現実の壁に突き当たり、頭を悩ませることもあるでしょう。
しかし、すべきことを紹介したような流れに沿ってタスク分けし、1つ1つに丁寧さをもって取り組んでいくことで、開業に向けての着実なステップが踏めるのです。
自分一人で検討しても答えが出なかったり、うまくいかなかったりする場合は、要所において税理士やデザイナーなどのプロの手を借りてみてはいかがでしょうか。
どの準備段階においても妥協することなく考え抜き、自分にとってもお客さんにとっても居心地が良い、理想の美容室を開業しましょう。