クリニックのデザインを考える!設計や依頼のポイントは?
医療機関であるクリニックの設計は、一般的なサービス業の店舗設計とは少し趣向が異なります。患者の健康やプライバシーに関わる医療機関だからこそ、清潔感や信頼感が何よりも大切になります。そのため、内装の設計やデザイン、施工業者の選び方などにも、特別な配慮が必要です。ここでは、クリニックの設計の流れや業者選びのポイントなどについて解説していきます。
クリニックの設計から完成までの流れ
クリニックの設計は、まず資金の準備から始まり、次に設計プランニングという手順に進みます。しかし、資金の準備と設計プランニングには密接な関係があり、場合によっては手順が逆になって、最初に設計プランニングを行うといったケースも見られます。開業のための資金を集め、そのなかで可能な設計プランニングを模索するのか、設計プランニングを決めてから実現のために必要な資金を集めるのか、経営者の判断次第で手順が入れ替わります。
資金とプランの調整が済んだら、続いて工事の着工に移ります。内装工事業者などを選び、造作工事や電気設備工事などに取りかかります。
着工後は医療機器の選定に着手します。医療機器を仕入れるときはメーカーとの交渉が重要になりますから、スムーズに進めたい場合はコンサルタントにサポートを依頼するのも良いでしょう。
次いで、看板やホームページのデザインを打ち合わせていきます。クリニックの宣伝効果や集客力に影響する部分ですから、慎重に検討を重ねるのが賢明です。同時に、必要となるスタッフの募集・採用も行います。
工事が終わったら、竣工・引き渡しとなります。その際、施工に携わった各担当者と一緒に竣工検査に立ち会い、不具合がないかしっかりとチェックしましょう。床や壁の傷や汚れ、設備の正常動作の確認など、担当者から説明を受けながらひとつひとつ確認していく必要があります。
建物に問題がなければ、医療機器を搬入していきます。機器の種類によっては搬入後に配線工事をしなければいけない場合もあるので、開業日までに余裕を持たせておくことが必要です。開業の準備が完了したら、開業しても問題のないクリニックかどうかを確認する官庁検査を受けます。官庁検査は、主に「消防検査」「保健所検査」「厚生局(旧社会保険事務局)検査」の3種類です。
クリニックの設計で重要なポイント
医療機関であるクリニックの設計でポイントとなるのは、患者への清潔感やアメニティ(快適な環境)です。たとえば、化粧室の手洗いをオート水栓にしたり、ペーパータオルやハンドドライヤーを設置したりといった配慮が求められます。また、化粧室の出入り口の建具に抗菌剤を使用する、体が不自由な人でも利用しやすいユニバーサルデザインを採用するなどといったアイデアも有効です。
ほかにも、待合室の椅子をベンチシートや長椅子ではなく、一人ひとりがゆったり座れるソファタイプにすれば、具合の悪い患者の負担を減らすことができるでしょう。このように、診察とは直接関係のない部分にこだわることが、患者の利用しやすい空間や環境を生み出すことにつながります。
そして、インフルエンザなどの飛沫感染患者への対策もポイントです。感染症患者への対応で重要なのは、感染症の隔離機能を高めることです。隔離手段としては、診察室を2つの部屋に分けるなどの方法が挙げられます。さらに、診察室を負圧状態にして空気が外に出るのを防いだり、処置室は逆に正圧状態にして雑菌やほこりの侵入を防いだりなど、換気をコントロールすることも感染予防になります。
それから、クリニックである以上は診察や治療における利便性や快適性も重視すべきポイントです。医療行為は多かれ少なかれ患者に何かしらの負担を与えます。そのため、患者が診察室や検査室などを利用する際、なるべく負担がかからないよう配慮する必要があります。診察や検査における快適性はもちろんのこと、患者が検査衣に着替えるときや私物を預けるときなどの利便性も追求すると良いでしょう。
施工業者の選び方のポイント
クリニックの設計や工事では、医療分野の知識や経験が求められます。そのため、施工を依頼する際は医療機関の設計や工事を担当した実績のある業者を選ぶことが望ましいといえます。そうした施工業者であれば、クリニックならではの動線や、患者が過ごしやすい空間・環境などを実現しやすくなるでしょう。失敗のリスクを減らすという意味でも、専門知識に詳しい業者に相談するのが賢明です。
また、なかにはクリニックの開業を専門に扱う施工業者もあるので、より実践的なノウハウが欲しいという場合はサポートを依頼してみると良いでしょう。自分では気づかなかった改善点などが見つかり、クリニックとしてのクオリティを向上できる可能性があります。
患者もスタッフも過ごしやすいクリニックに!
クリニックは体調不良やケガを抱えた患者、また病気に対する不安を感じている人が集まる場所です。そのため独特の緊張感があり、空気も重々しくなる傾向が見られます。そんな患者と医療従事者として接するスタッフも、強い責任感と緊張感を持って勤務している場合がほとんどです。
シビアな雰囲気になりがちなクリニックだからこそ、待合室や診察室、検査室などは患者やスタッフがなるべく過ごしやすい空間である必要があります。利便性と快適性に優れたクリニックであれば、患者も安心して利用できますし、スタッフにとっても働きやすい環境となります。
そうしたクリニックを実現するには、設計段階からコンセプトをしっかりと固めることが重要です。準備から完成までの流れを理解し、医療機関として重視すべきポイントを施工業者と共有しつつ、患者とスタッフにとって理想のクリニックとなることを目指しましょう。