照明計画とデザイン手法についての基礎知識を公開
照明は単に暗い部分を明るくするという一般的な機能だけでなく、場の陰影を作り出すことで空間を演出する効果がある。飲食店であれば華やかで清潔感のある照明が求められるし、リラクゼーションサロンなどのサービス店舗であれば、癒やしの効果をもたらす照明計画が必要だ。
具体的なデザインについては内装工事のプロに任せれば良いのだが、経営者であるあなたも、ある程度は基礎知識を学んでいた方が、より自分のイメージに近い空間を作り上げることができるだろう。今回は店舗経営者、オーナー向けに内装計画における照明計画の基礎について解説させて頂く。
目次
全般照明と局部照明について
照明は全般照明と局部照明に分類することができる。前者は部屋全体の照度を確保するために必要となる。後者は、例えば作業机の上など、特に明るさが必要な場合や、壁やオブジェを照らすなど、空間演出の効果を図る場合にも用いられる。全般と局部を上手く使いことなることで、機能的で魅力的な照明計画が可能となる。
全般照明にはどの様なものがあるか?
それでは全般照明にはどの様なものがあるだろうか?下記に事例とその特徴を解説する。
ダウンライトは、最も一般的に使われる照明だ。主に暖色系の光源が用いられ、空間を柔に包み込むような暖かな光を演出してくれる。飲食店やエステサロンなど癒やしのサービス系を提供する店舗によく使われる。
ペンダントライトとは天井からワイヤーで吊るして、空間全体を照らす約役割を果たす照明。照明自体の形状を工夫することで空間デザインが可能なため、おしゃれなカフェやレストランなどで空間演出のポイントとして併用されることが多い。
シーリングライトとは、天井に埋め込むタイプの照明となる。寒色系の蛍光灯が用いられることが多く、事務所や作業場など、仕事場の照明として使われることが多い。
シャンデリアは空間をゴージャスに演出したい場合に用いられる。例えば高級レストランや裕福層をターゲットとしたエステサロンなどでよく使われる。写真の事例は某有名レストランの特注品シャンデリア。
局部照明にはどの様なものがあるか?
局部照明は空間にアクセントを与えたり、重要なものを照らすなど、全般照明の補助的な役割で用いられることが多い。下記に局部照明の方法を紹介する。
フットライトは空間演出の効果もあるが、暗い廊下などの足元を照らして歩行上の安全性を高めるという効果もある。
手元の明るさを確保するのはもちろんのこと、それ自体のデザインがインテリアの一部として効果がある。
特定のオブジェを照らす効果や、何もない壁を照らすことで空間にリズムを生む効果もある。近年多用される手法である。
壁面を照らすために壁に取り付ける照明、照明それ自体のデザインを工夫することで、空間にアクセントを生むことができる
照明を組み合わせで空間をデザインする
上述した各照明を組み合わせることで、様々な空間を演出することができる。その事例を公開する。
ダウンライトが部屋の暗い部分と明るい部分を作り、フロアスタンドが部屋の床面全体をぼんやりと明るくする。落ち着きが求められるリビングルームなどでよく用いられる手法だ。
ブラケット照明が壁に反射し柔らかな光を部屋全体に導く、それに対応する様にフロアスタンドが床面全体を柔らかに包込みつつも、壁のブラケットのデザインがアクセントとなり、柔らかで独創的な空間を演出する。
直接照明と間接照明について
直接照明とは、光源から直接照らすことで、その部屋を明るくする方法で、明るさを確保するという意味では効果が高い。
一方、間接照明とは、光源を一度、壁や天井などの建築部材に当て、その反射光で部屋を明るくする方法だ。当然ながら明るさを確保するという意味での効果は薄いが、柔らかな光を部屋全体に広げることができるので空間演出の効果がある。
また、間接照明は基本的には照明を見せないことが前提となるので、内装の造作と一体化させることで、より空間のデザインのレベルを上げることができる。下記にその手法を記載するので参照頂きたい。
内装造作と一体化した間接照明
光源の種類について
照明の効果は照明器具の使い方だけで無く、光源であるランプの種類によっても大きく異る。光源を大別すると「蛍光灯」「白熱灯」「HIDランプ」「LEDランプ」で分類することができる。それぞれの特徴を下記に記載する。
蛍光灯
蛍光灯は発光効率が良く、寿命が長い。価格は安価。寒色系の光源で、事務所や作業場など強い照度が求められる場所で使われる。
白熱灯
白熱灯は柔らかく温かみのある暖色系の光源。寿命は短い。住居や店舗など、癒やしの効果が求められる場所で使われる。
HIDランプ
高輝度ランプとも言われ、白熱灯に比べて、エネルギー効率が高く、寿命も長い。大規模空間に適しているため、公共施設等で用いられることが多い。
LEDランプ
省エネルギー且つ寿命が長い光源。最近では増産体制が整ったことで、価格もかなり落ち着き、大規模内装では全てをLEDランプという事例も増えてきた。
まとめ
この様に、一言で照明計画といっても、様々な手法と効果がある。当然のことながら提案をするのは内装会社なのだが、これらを知っているか知らないかで、提出された提案に対する対応方法が全く異なると言っても過言では無い。提案に不明点があれば、どの様な考えで照明計画を行っているか聞いてみるのも良いだろう。納得がいかなければ、上記事例を基に自分の案を考えてみるのも良い。施主であるあなたの意見を取り込むことで計画はより良いものになる筈だ。