鍼灸院の開業には注意が必要!経営に関する規則や成功のコツを伝授
鍼灸師とは針やもぐさなどを用いて治療を行う施術師です。いろいろな病気や事故による後遺症を直すことができると期待されており、最近では治療院も増えてきました。
しかし「自分も鍼灸師として独立したい」と考えている方は注意してください。鍼灸師になるためには資格が必要です。その他こまかいルールもあるので、何も知らずに開業することはできません。
今回は鍼灸院の開業について、必要な資格や申請、経営のコツについて解説していきます。ぜひ参考にしてください。
鍼灸院開業に必要な資格と申請
鍼灸院を開業したい場合、はり師、きゅう師の国家資格を取得していれば、開業の条件は満たされています。そのほか経営の安定のため、幅広く施術を行えるようあん摩マッサージ指圧師の資格や柔道整復師という資格も取得しておくといいです。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の3つの国家資格を取得すると、「三療師」とよばれるようになります。追加であん摩マッサージ指圧師の資格を取るだけで「三療師」と名乗ることができ、治療の幅も広がるので取っておくのがよいかと思われます。
また柔道整復師は、脱臼・ねんざ・打撲など日常で発生するけがに対しての治療を行える資格です。幅広い客層に利用してもらえる可能性が広がるので、こちらもとっておくといいでしょう。
鍼灸院を開業する際は、開設届を提出する必要があります。開設届は都道府県知事に対して提出するもので、自分がマッサージ師としての知識と技術を持っている、ということを証明するために提出するものです。開業10日以内に届け出る必要があるので忘れないように。
またあわせて開業届を出すこともオススメします。開業届の提出は義務ではありませんが、提出しておくと税金の控除をうけることができます。開業届の提出は開業から一か月以内と決まっていますが、期限をオーバーしてもペナルティがあるわけではないので、出し忘れでも心配はいりません。しかし早めに出すことをおすすめします。
鍼灸院開業にかかる費用と内訳
鍼灸院を開業するにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
開業費用は300~1,000万円ほどです。なぜこんなに幅広いかというと、立地や規模、物件を借りるのか、買うのかによって大きく変動するからです。つまり工夫次第では300万円程度でおさえることができるということです。
内訳としては、物件取得費、設備投資費、広告費の3つに大きく分かれます。
物件取得費は、店舗を取得する費用です。設備投資費は内装工事や医療機器などにかかる費用です。広告費ももちろん集客のための大事な開業費用であり、チラシやホームページの作成が広告費に含まれます。
内装工事は、坪単価で計算されるケースが多いです。相場は1坪につき15~25万円ほどです。内装工事費は開業の際にかかる費用の中では大きなものですが、利用者に落ち着いていただけるような空間にするためにも内装はこだわったほうがいいでしょう。
鍼灸院開業に関する規則
鍼灸院を開業する際はさまざまな規則があるので気をつけてください。
まず店名は、あはき法、柔整法によって広告の制限をうけます。あはき法とは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律、柔整法とは柔道整復師に関する法律のことをいいます。
たとえば、業種がわかるような名称でなければならないとか、開業者の姓をあたまにもってこないといけないなどです。「〇〇治療院」といったような、医療機関と区別のつかないものは認められていません。
そのほかにも、抽象的ではありますが、まぎらわしい名称や意味のわからない名称も控えてください。ルールだからというよりは、わかりやすい名前のほうがお客様も安心して利用できるのだと考えて、安心感をあたえられるような名称にしましょう。
さらに、施術室や待合室もルールが決められています。あはき法と柔整法の構造設備基準によって定められているものをご紹介します。
▼施術室
・6.6平方メートル以上の面積をもった、施術専用ルームがあること
・部屋の面積の1/7以上の部分を外部の空気に触れさせるか、換気用の装置があること
・器具や手などを消毒するための設備があること
▼待合室
・面積が3.3平方メートル以上の部屋であること
このほか、各自治体によって決められているルールもあるので確認してください。
鍼灸院開業に適した立地とは
この項目では、鍼灸院開業の際に重要な「立地」について解説します。
まず人通りが多いところは経営に適している立地だと言えるでしょう。
しかし単に人が多いところ、という条件で決めてしまうことはおすすめしません。いくらお客さんが多くても、施術師の手が回らなくては意味がないからです。そのため治療院の設置は従業員の数に応じて決めるのがいいでしょう。たとえば、少人数で経営する場合、地元の鉄道の駅近くに開業すれば、大きな駅の近くに開業するよりは人通りが少なく、ほどよい利用者数になるのではないでしょうか。
また開業する場合の立地条件としては「知ってもらえる場所」や「通いやすい場所」という項目も重要です。知ってもらいやすい場所とは先ほど述べたような地元の駅の近くや、地元のスーパー、公共の場の近くなどです。人の目につく場所を探しましょう。
ここまで、少人数で鍼灸院を開業する前提での立地条件をあげましたが、複数人での施術の鍼灸院であれば、人が多いところという条件も視野に入れて考えるとよいでしょう。
リピーターを増やすコツ
鍼灸院の開業において、次の課題は「リピーターを増やすこと」です。ここでは、リピーターを増やすコツをご紹介します。
まず簡単に、リピーターに対する優遇制度があれば、リピーターとなる利用者が増えるでしょう。たとえば再来院による割引や、「〇回目のご利用で~のサービス無料体験」といったサービスです。
またほかの鍼灸院と差別化をはかるようなコンセプトをつくることもリピーターを生み出す条件となります。
どの客層にどのくらいの利用してもらうかを考えたうえで、コンセプトを決めるとうまくいくのではないでしょうか。
たとえば、社会人の利用を増やしたいのなら「夜遅くまで開業」というコンセプトが適しているでしょう。高齢者の利用を増やしたいのなら「あたたかい雰囲気」というコンセプトがいいでしょう。
サービス面だけでなく、内装にこだわるのもひとつの手です。
汚い内装や古びた内装は、あまり好感は持てません。きれいな内装、緑の多い内装、おしゃれな内装というように、利用者が「ここに通いたい」と感じるような内装づくりが大切です。
まとめ
鍼灸院を開業する場合、「鍼灸師の資格」を取得していれば開業ができます。
開業にかかる費用としては、合計で300~1,200万円程度と相場の幅が大きいです。その大きな理由に立地の良し悪しが含まれますが、内装をこだわるかによって内装費も多少相場の幅が大きいことも理由のひとつです。
また、店名や施術室、待合室のルールが法によって定められており、加えて、各自治体によるルールもあるので確認してください。
少人数で鍼灸師を開業する場合の立地探しでは、人通りが多い場所よりも、知ってもらいやすい場所を選ぶことをオススメします。
鍼灸院を経営するにあたって重要なリピーターを増やすには、優遇制度や独自のサービス、コンセプトなどを決めることが大切です。
鍼灸院を開業するには、「大きな利益を得る!」と意気込むよりは、「利用者一人一人を大切にする」ことが大切になるのではないでしょうか。ぜひ、あたたかい雰囲気の鍼灸院を作ってみてください。