知らなきゃ損するパン屋、ベーカリーの内装工事費と坪単価について
パン屋、ベーカリーをこれら開業するにあたって、開業資金の30〜40パーセントを占める内装工事費は非常に重要な項目だ。その金額の大きさ故、失敗は許されないし、やり直しをすることもできない。
また、何よりも自分が納得のいくものを作る必要がある。しかし、今までパン一筋で生きてきた新規オーナーにとって、専門的な分野である内装は理解しずらい部分があるのではないだろうか?
業者任せにしていると、適正な工事価格で発注ができないため、開業資金に大きな影響を与えてしまう可能性がある。よって、オーナー自らが適正な価格について判断できる力を身につける必要があるのだ。
今回はアーキクラウドの事例を基に、誰でも理解できる形で内装工事費、坪単価についてわかりやすく解説させて頂く。また厨房設備については別途記事を作成するので、そちらも参考して頂きたい。
目次
パン屋、ベーカリーの内装工事費の特徴とは?
パン屋の内装工事費の特徴として、厨房やイートインスペース含めた平面計画が大ききなポイントとなる。通常の飲食店の場合、全体面積に占める厨房の割合は、30〜40パーセント程度だが、パン屋の場合は、厨房設備が多いため、おおよそ50パセーセント以上になる。
通常厨房スペースの工事費用は、どの様な場合でも一定の仕様が必要となるため、それほど多きな変化は無い。しかし、販売スペースや客席スペースについては、グレードによって工事費は大きく変わって来る。
それでは実際にパン屋、ベーカリーの内装工事費について見積書をベースにその中身を見てみよう。
パン屋ベーカリーの内装工事費見積書を解体する。
パン屋、ベーカリーの内装工事費用は坪単価30万円〜50万円が相場となる。今回の見積もりは店舗面積20坪となる。合計工事金額が約600万円となるので、坪単価は30万円だ。
パン屋の特徴としては、厨房が大きくなるため、設備工事に費用がかかるという点がる。今回の工事でも電気工事や給排水工事、空調設備工事が全体の1/3以上を占める結果となった。
上記は各工事項目ごとに金額記載されているが、各工事項目がどの様な工事なのか理解できなけれ意味がない。よって下記に各工事項目の詳細について解説していく。
①仮設工事
仮設工事とは、工事のための準備費用のことを言う。分かりやすい例で言えば、建物の外壁に沿って足場のパイプが組み立てられた光景を見たことがあると思うが、これは外壁の工事をするための作業員の作業スペースとなる。
内装工事の場合は、塗装工事をする時に、工事以外の部分に塗装がつかない様にマスキングを行うのだが、これを養生と言う。これも仮設工事の一種だ。
②軽鉄・ボード工事、ガラス工事
軽鉄とはLGS又はスタッドと呼ばれる鋼材で、間仕切り壁を支えるための骨組みのことを言う。下記動画の床から天井までに乱立する部材が軽鉄となる。
ボードとは石膏ボードのことで、壁材としては定番となる素材だ。ガラス工事とはその名の通り、ガラスを使用した工事で、パン屋の場合は、ファサードや厨房と店舗スペース部分に設置されることが多い。
ガラスは高価な素材であるので、ガラス面積を小さくすれば内装工事費を下げることが可能だが、デザイン上の制約が発生するので注意が必要だ。
③左官工事
「左官工事」とは床や壁の上にモルタルや漆喰、プラスター、繊維等をコテを使って塗ったり、貼り付けたり、吹きつけたりるする工事のことを言う。パン屋の場合、店舗部分に自然味のある仕上げを施す時によく使われる。
④防水工事事
防水工事はパン屋での場合、厨房の床に施す工事のことを言う。厨房は清掃に水を使うため、漏水を防ぐためが目的となる。特に下階に住居や店舗などの賃貸スペースがある場合は、水漏れは絶対に許されないので重要だ。
①アスファルト防水、②シート防水、③塗膜防水の種類があるが、①②は何重にも仕上げを施す厳重な工事で屋上の屋根部分など、直接雨がかかる部分に使用されることが多い。
③については防水性の塗装で、①②と比べて比較的簡易で値段も安い。ベランダや室内など直接雨がかからない場所に使用される。工事費用は7,000円〜10,000円/㎡が相場となる。上記見積も③を使用した金額となっている。
⑤木工造作工事
木工造作工事は現場で職人が作成する、棚や家具などの造作工事となる。パン屋の場合は、陳列棚やカウンターなどがそれに当たる。自分のイメージに合う既成品を見つけ、上手く利用できれば費用を下げることが可能だ。
⑥建具工事
建具工事とは開口部に取り付ける扉や窓のことを言う。木製、鉄製、アルミ製があるが、木製は値段は安いが、気密性に劣る。一方鉄製やアルミ製は木製に比べて値段が高いが、気密性は高い。例えば厨房と店舗部分は鉄製、店舗内は木製といった具合に場所によって使いわけることで、費用対効果に沿った内装になる。
⑦内装工事
内装工事は塗装工事以外の一般的な仕上げ工事となる。床のタイル及びフローリング、壁のビニルクロス貼り、天井の化粧ボードなどだ。面積が多きいので、素材の値段が内装工事費に直結するので注意したい。
こちらも使い分けが重要で、見えるところ(販売スペース、客席など)は高価な素材を使い、見えない部分(スタッフルームや厨房)は安価な素材を使うことで、費用対効果に沿った内装が可能だ。
⑧塗装工事
塗装工事とは、仕上げの塗装工事ことを言う。今回は壁と天井の一部を塗装工事を行った。
⑨電気設備工事
電気工事設備は分電盤の設置やコンセントの配置に伴う配線工事、その他照明の工事がそれに当たる。パン屋、ベーカリーの場合、厨房機器で多くの電力を使うので、電気工事費用も高くなる。機能的に必ず必要となるので、安易に工事用を下げることは難しい。
⑩衛生設備給排水工事
衛生設備工事はトイレの便器や洗面台、その他厨房の水栓、シンクなどがそれに当たる。給排水工事は給水及び排水用の配管類の設置工事となる。こちらもパン屋という性質上、価格を下げることは容易ではない。
⑪空調設備工事
空調衛生設備とは空調機器(室内機、室外機)をの取り付けとそれらをつなぐ冷媒管とドレン管の設置工事となる。空調機の仕様や内外機間の距離によって多少に費用の差が生じるが、こちらも値段を大きく抑えることは難しい。
⑫サイン工事
サイン工事とはわかり易く言えば看板工事のことだ。路面店であれば店舗前面の外壁部分に設置するのが通常だ。ロードサイド店舗の場合は道路から目立つ様に大きな看板を設置するのが定番となる。物件により様々ではあるが、上記見積は路面店で間口も狭い店舗であったため費用はどれほ必要とはならなかった。
⑬雑工事
雑工事とは①〜⑫以外に必要となる工事だ。例えば引き渡し前のチェックによる修正工事や清掃などがそれに当たる。
⑭諸経費
諸経費には現場管理費やデザイン、設計料、事務費用がそれに当たる。工事費用の10%〜20%が相場となる。
パン屋、ベーカリーの内装工事費を安くする方法とは?
パン屋、ベーカリーを新たに開業するにあたって、内装工事費用は誰もが安く抑えたい項目であるのは間違いない。そこで気を付けなければならないのが、 安い=妥協となってはいけないということだ。
やはり自分の思い描くイメージを実現してこそ、お店への愛着が生まれるし、売上にも大きく影響してくるだろう。しかし内装や建築について全くの素人である経営者がこの相反する内容を実現させるのは至難の業だ。今回はプロの目から理想の内装を実現させつつ、内装工事費用を下げる方法を公開する。
複数の業者で見積もりを比較する
最も効果的でポピュラーな方法が複数の業者に見積を提出させる方法だ。見積もり比較をすることで、業者は受注のために最低限の利益を載せて見積もりを作成する。競争原理を働かせることで、価格は確実に安くなるのだ。
1社のみの見積もりは競争原理が働かないので、工事は高止まりとなってしまう。適正価格で内装工事を実施している経営者のほとんどは見積もり比較を実施している
実際にアーキクラウドで見積もり比較を利用して施工したデパ地下のパン屋の案件でも、通常であれば坪単価30万円以上となるところだが、複数の業者に見積りを取り、競争原理を働かせることで、10坪の店舗で工事価格175万円、坪単価17.5万円と大幅に減額となった。
アーキクラウドではパン屋の実績がある業者とのパートナー契約を結び、無料で見積もり比較ができるサービスを実施いていうので是非ともご利用頂きたい。
VE案を業者に出してもらう
VE案とは(Value Engineering)と言う。価値を維持しながら、技術的な解決でコストを下げる方法のことだ。反対に価値を下げてコストを下げる方法をコストダウンと言う。例えば同じ仕様の素材でもメーカーによって価格に大きな差が生じることがある。また、設計における過剰な仕様を適正化するのもVEの1つだ。これらは経営者自らが実施するは難しいので、業者や設計者、デザイナーに提案してもらうのが良いだろう。
最後に
パン屋、ベーカリーの内装工事は金額が大きく複雑だ。しかし、だからと言って、業者任せにしてしまってはいけない。経営者自らが内装工事について深く理解し、積極的に関わることで、工事費用は安くなり、自分の理想のお店が出来上がる。まずは今回の記事を理解しつつ、自分の理想となるお店のイメージを思い描いてみよう。