蕎麦屋を開業して成功させる方法
蕎麦といえば、日本を代表する伝統料理だが、近年では蕎麦粉の割合が30%程度しかないものも多く販売され、蕎麦本来の風味を味える場所というのは少なくなっているかもしれない。
このような状況の中で「身近に美味しい蕎麦を…」という思いから、蕎麦屋を開業する方は多いが、その多くが開業1年以内に廃業しているという事実がある。
今回は、これから蕎麦屋を開業したいという方のために、蕎麦屋開業に関する基礎知識と成功させるための方法について解説する。
目次
蕎麦屋を開業させる前に知っておきたい基礎知識
蕎麦屋に限らず、飲食店の廃業率は10年間で90%以上と言われており、10件に1件は廃業してしまうという事実がある。
また、激戦エリアなどでは10年後に生き残っている割合が300分の1程度と言われている場所もあるほどだ。
蕎麦屋に関しては、開業後1年以内の廃業率が70%と言われており、飲食業界の中でも廃業率が高い業態となっている。
蕎麦屋の廃業理由として一番多いものはなんだと思われるだろうか。廃業理由は「単純に儲からない」というものが実は一番多いのだ。
競合が出店したから、価格競争が厳しいからなどではなく、単純に売り上げが上がらない、そして利益もでないからやめてしまうという、廃業理由としてはなかなか厳しい現実がある。
このような事実がある反面、外食産業が縮小する中でうどん屋、蕎麦屋の市場は横ばいもしくは微増を続けているという事実もある。
その背景には、近年の大手うどん蕎麦チェーン店の出店増加が加速している事や、讃岐うどんブームによって本格的な味を求める顧客が増加している事が原因として考えられている。
これらの事を総合すると、うどん、蕎麦に対する注目が以前より高い状態になっており、個人での開業に関して、後押しとなる可能性も十分に考えられるのではないだろうか。
また、このようは背景からうどん、蕎麦屋の業態は大手チェーンの戦略のように、低価格と手軽さを売りにするファストフード的な位置づけの店と、うどん、蕎麦を料理として提供する質を重視した店の二極化が進んできている状況にある。
したがって、どのようなコンセプトで店作りを行うかという事についても、今後、蕎麦屋の開業を志す方は十分に検討して行く事が必要だと言える。
個人経営の蕎麦屋が廃業しないためには?
蕎麦屋を開業し、すぐに廃業させてしまわないためには何が重要だと思われるだろうか。それは、店のコンセプトを明確化させる事だと言える。個人での開業の場合、多くの方が、味や素材にこだわって勝負しよう!と思い開業を考えるようだ。
しかし、開業後、安定的に売り上げが作れるようになるまでの間というのは当初のビジョンを見失わせ、目先の利益を追いかけるがあまり、徐々に価格を下げてしまうという事がよくある。 その結果、質もそこそこ、価格もそこそこという「どっちつかず」の店になり、採算が合わなくなり廃業する事になってしまう。
ビジネスモデル的に客単価が高くても1000円ほどであるため、単価をあげる工夫や、単価があげられるターゲット設定、さらにはランチだけではなく、ディナータイムにも使ってもらえるような工夫が早期に廃業させないためには重要な事だという点をまずは理解していただきたい。
蕎麦屋の開業にかかる資金
続いて、開業前の基礎知識としや蕎麦屋開業にかかる費用について解説する。個別のケースによって費用というのは大きく変動してしまうため、あくまでも一般論として参考にしていただければ幸いである。
店舗取得費
まずは店舗取得費だ。蕎麦屋の開業に当たって良質な物件を見つけるという事が絶対に外してはいけない重要なポイントとなる。新規で店舗を取得する場合、諸々の経費を含めると最低でも100万円〜300万円程度は想定しておきたいところである。。
最近では、比較的蕎麦屋の居抜き物件というのも見つかりやすいため、居抜き物件を利用すれば費用を抑える事はできる。しかし、居抜き物件とはなんらかの事情で廃業してしまった物件であるという事は忘れてはいけない。
前の借主が内部的な事情で廃業したケースは問題ないだろうが、外的要因で廃業してしまったという事も可能性として考慮し二の舞にならないように注意が必要である。
また、居抜き物件の場合、設備も残っているケースがあるが、廃業率の高い蕎麦屋においてそのまま同じ形でビジネスをスタートするというのはあまりおすすめできない。やはり、他と差別化できるなんらかの戦略を持って開業できるように準備をしておこう。
設備投資
続いて、設備投資に関してだ。
どのようなものを取り扱うかによっても異なるが、小型店舗の場合で300万円程度、20坪程度の店舗になると1500万円程度と想定しておけば問題ないだろう。業態上、特別な設備は特に必要ないが、蕎麦だけではなくサイドメニューも考慮して設備を選んで行く事が必要となる事は忘れてはいけない。
戦略次第ではあるが、ディナータイムに利用を増やすためには一品料理などの拡充も必要となる。事前にサイドメニューに関しても考慮しておかなければ、あとで設備を追加するのは意外と労力がかかり実現出来ない事も多い。
内装、外装工事費
店舗の取得、設備投資が完了したあとは内装、外装工事についてだ。
外装、特に内装というのは、顧客満足度だけではなく、顧客の回転効率などにつながり、関節的に売り上げにつながる重要な部分であるため、手を抜く事ができない部分だと言える。
費用に関しては設備投資と同様、規模やどのような店舗にするかによっても異なるが、小規模な店舗の場合で300万円程度、20坪ほどの規模で1000万円ほどと考えておけば良いだろう。
また、内装、外装工事といえば多くの方が見た目重視のデザインを想定してしまいがちだ。もちろんそば切り自体をディスプレイする方法や、一風変わったデザインを採用するという事も重要である。
しかし、見た目以上に重要なのが、業務における様々な観点での効率の良さである。効率の良さとは、顧客の回転率もそうであるが、従業員の動線やキッチン内の作業効率なども同様であり、工夫次第では、人件費の削減や、生産性の向上などにも効果がある。
単価の低い蕎麦屋の場合には、できるだけ経費を削るという事も利益構造全体を見たときに意識して取り組んで行く事が必要なポイントだと言える。また、内装や外装の持つ視覚的な効果は提供する料理や、サービスの質を高める効果もあるため、是非こだわっていただきたいポイントである。
その他経費
最後は、運転資金を含むその他の経費についてだ。
先ほど紹介した経費以外にも店舗を経営していくためには様々なものがあるが、大きなところでは運転資金がある。蕎麦屋というのは、わざわざ食べに行くという消費行動が起きづらいため、安定して売り上げを作れるだけの顧客が着くまでに時間がかかると思っていた方が良いだろう。したがって、顧客が着くまでの資金を準備する事が必要になる。
運転資金の額については、基本的にはシュミレーションした月収の1年分程度を用意しておくのが普通である。したがって、300万円〜ほどあればひとまずは安心する事ができる。
蕎麦屋開業にかかる費用を4つ分けて解説してきたが、合計すると開業資金は小規模店舗の場合で1000万円〜2000万円程度かかるものだと考えておくと良いだろう。もちろん自己資金でまかなう事ができればよいが、多くの方が借り入れを検討していると思う。
どのような手段で借り入れを行うにしろ、総資金の3分の1程度は用意しておかなければいけない点も合わせて検討しておこう。
蕎麦屋成功の鍵は単価をあげる工夫
続いて、蕎麦屋を成功させるための肝となる部分を紹介する。
似たような業態にラーメン屋があるが、ここ数年のラーメンブームの影響でブランディングがしやすく、メディアなどの影響を受ければ1日100杯程度販売する事も可能である。
しかし、蕎麦屋はそういうわけにはいかない。
わざわざ食べに行くという消費行動が起きづらい蕎麦屋では、蕎麦意外の部分でも魅力を作り集客する。開業前の段階でできるだけ集客しやすい立地を選ぶなど集客をするための計画は必ず立てておかなければいけない事だと言える。
しかし、それだけでは蕎麦屋を成功させる事は出来ない。蕎麦屋を成功させるためには、それ以外にも単価をあげる工夫が必要となる。
先述の通り、蕎麦屋は単価を上げづらいビジネスモデルである。したがって大手うどん、蕎麦チェーン店の多くが客単価を上げるためにサイドメニューの拡充に力を入れており、単価を上げるための工夫をしている。
しかし、個人で開業する場合に、大手チェーンと同じ事をやっていても意味がない事は想像たやすくないだろう。
競合に勝ち抜いていくためには個性的なサイドメニューを拡充したり、大手フランチャイズでは積極的に取り組まれていないアルコール類の提供に力を入れたり差別化を意識した取り組みをする事が重要な事ではないだろうか。
また、単価をあげるにはメニューや商品と行った直接的な方法だけではない。飲食ビジネスにおいて単価をあげるにはサービスだけではなく、内装という点も非常に重要となる。
昼間はランチで回転数をあげ、夜はディナーで単価をあげて行くようなスタイルをとる場合、席のレイアウトなども最適化するべきなのはいうまでもない。このような作業も内装の設計次第では素早く席移動が出来たり、顧客の人数に合わせてレイアウトを変更する事が可能になる。
つまり、単価をあげるためには、競合店や大手チェーンがやっていないメニューの工夫、内装の工夫などが必要な事だと言える。
まとめ:単価を上げる工夫で繁盛店を目指そう!
今回は蕎麦屋を開業し、成功させるための基礎的な知識と、成功のためのポイントについて解説した。
単価が低い蕎麦屋においては突発的に売り上げを伸ばす事は至難の技と言える。このような環境の中で着実に売り上げを伸ばして行くためには事前の戦略次第だと言えるのではないだろうか。
戦略を立てる段階で必要な観点は、客単価をあげる工夫と、顧客満足度と業務効率を意識した内装の工夫が必要となる。サービスの工夫による客単価の向上は飲食業界の経験や、事前のリサーチによって設計する事ができるが、内装での工夫に関しては十分に実績を積んだ内装業者に依頼するという事も重要となるだろう。
今回の記事で解説した項目を参考にしていただいて、ぜひ、成功する蕎麦屋開業を目指していただければ幸いである。