内装工事の見積書の見方を公開/新規店舗開業オーナー向け
飲食店、サービス業、物販店店舗問わず、これから新規に自分の店舗をオープンする予定のオーナーにとって、内装の工事は必須だが、そこで問題になるのが、内装工事の見積書の難解さだ。
内装など建築業界で使われる専門用語は、素人であるオーナーには、その意味を理解することは困難だろう。
しかし、工事契約の判断を下すのはオーナー自身であるため、見積書の内容が適正であるか、判断する知識を身につけるのは当然のことだ。今回は、素人でも難解な見積書の中身が理解できる様に、実際の見積書をベースに解説させて頂く。
見積書の表紙を確認する
それでは、実際に見積もり書の中身を見てみよう。素人にはなかなか理解しづらい部分もあるが、内装工事費はどの様な業種でも開業資金の50%以上を占める大きな出費だ。
大きなお金を出す以上、自分で内容を把握することは、避けては通れない。出来る限りわかり易く解説させて頂く。
工事金額は材料の値段や職人の手配具合により日々変わり、物件の状況によっても異なるので例えば塗装工事は◯◯円といった具合に言い切ることは難しい。
しかしながら、多くの経験を積むことによって、この工事ならだいたいこのぐらいだろうという相場感を掴むことができる。
そのためには、各工事項目が具体的にどの様な工事なのかを自分の頭の中でイメージできる様にならなければならない。よって、今回はこのイメージを掴んでもらうために動画を中心としたコンテンツで解説していく。
まずは①有効期限について、資材の価格や職人の人工は日々変わるため、内装工事の見積もりには必ず有効期限がある。
内装工事業者としても、今職人を確保することができても、数週間後には確保することができずに、工事自体も実施できなくなる可能性もある。
業者側の自らのリスク回避としてこの様な有効期限を記載していると言える。通常の見積もり有効期限は1ヶ月〜3ヶ月程度と考えておこう。有効期限外に工事を発注する場合は、再度見積書を出す必要があるので注意したい。
内訳書を徹底解説する
内訳書は内装工事見積書の核とも言える重要なページだ。全体の工事費に対して、どの工事項目が高いのか?また、各工事項目の金額の比率もここで確認できる。
極端に突出している工事があれば、華美な材料を使っていないか、余分な工事をしていかなど、検証のネタをここで見つけることができる。
今回の見積もりを見ると「電気工事費」が765,700円と他と比べて突出しているのが見て取れる。美容院の場合、多くの電気機器を使用するため分電盤の設置やコンセント設置など通常より多くの費用が必要となる。
また、照明設備に関しても、カット作業をするための照度の確保と空間演出としての間接照明の利用など、通常よりも高い金額が必要となる。また、シャンプー台などの給排水配管の費用も必要なため、全体工事金額における設備工事の割合は高くなる。
よって、この内訳書で「軽鉄工事」の金額が突出していたら、おかしいなということになる。下記に業種別の内訳書の見方ポイントを記載したので参照頂きたい。
「美容院、理容院、エステサロンなどのサービス業」
電気工事、給排水設備など設備工事が全体工事費に占める割合は40〜50%と高めになる。また、世界観演出のため凝ったデザインにすると内装装飾費用は通常工事費の10%程度に収まるのだが、20%程度に跳ね上がる。
「居酒屋、バー、カフェ、レストラン、パン屋などの飲食店舗」
ポイントは厨房の工事費用だ。物件によるが厨房部分の防水工事や床上げが必要な場合は、金額が大きくなる。内装工事費の20〜40%の費用がかかる。
「アパレル、食料品販売などの物品販売業」
設備工事費に特に大きな金額はかからない。造作などにこだわりを持たなければ、各工事項目が突出することはないだろう。簡素な内装であれば、空調工事費用の比率が高くなることがある。空調工事費は絶対に必要な工事であり、価格も下がりにくいため、他の工事の仕様が下がると目立って突出する傾向にある。
明細書の中身を確認しよう
それでは続いて、各工事項目の明細書を確認していこう。これらを把握することで、工事の実体を理解することができる。つまり工事金額と実際の工事がここで初めてリンクするのだ。
このつながりこそ、あなたの見積書読解力になる。これから2店舗目、3店舗目とお店を増やしていいく中で必ず役に立つ能力となるので、必ずマスターしておきたい。
①仮設工事
「仮設工事」は工事をするための準備費用と理解しよう。例えば①−1「現場養生費」は内装工事を行おう上で傷つけてはいけない部分をカバーして守るための費用だ。
エレベータをに傷をつけないために、ビニールシートや毛布で内部を覆う場面を想像してもらうとイメージしやすいだろう。共用部や建物の躯体(柱、梁、床)は基本的に傷つけてはいけないのだ。
また、塗装工事において、他部にペンキが付かない様ために施すマスキングも養生の一部だ。
②軽鉄工事
「軽鉄工事」は壁や天井を支えるための骨組みと理解しよう。スタッド(LGS)とも言われ、コの字型の断面形状をした鉄の部材で、床と上階の床の間にこのスタッドを一定のピッチで配置していく。
このスタッドに壁となるPB(プラスターボード)やコンパネを貼っていく。この一連の作業を軽鉄工事と言う。因みにスタッドはその長さによって断面の大きさが異なるが、国土交通書が発行する「公共建築工事標準仕様書」にて規定されている。
③木工造作工事
「木工造作工事」とは建物内部の床や壁、階段や窓のなどの取り付け工事のことを言う。例えば③−1「上記床 ベニヤ ステ貼」はシャンプー台の床上げ部分の下地となるベニヤを設置する工事となる。
④木製建具工事
「木製建具工事」とは外壁や間仕切り壁の開口部に取り付けられる窓や扉のことだ。内装工事の場合、エントランス、スタッフルーム、トイレ部分に限られるためそれほど大きな金額にはならない。
しかし、エントランスに自動扉を設置したり、間仕切り部分が防火区画の場合は、防火扉の設置が費用となるため、費用は高くなる。
⑤造作家具工事
「造作家具工事」は造り付けの家具を設置する工事と理解しよう。上述した木工造作は、壁や天井などの空間を仕切るパーツであるのに対して、造作家具は家具自体の工事となる。
例えば⑤−1受付カウンターや⑤−2商品陳列ボックスなどがイメージしやすいだろう。職人が一つ一つ丁寧に作成するため職人の腕が試される工事である。
⑥左官工事
「左官工事」とは床や壁の上にモルタルや漆喰、プラスター、繊維等をコテを使って塗ったり、貼り付けたり、吹きつけたりるす工事だ。高度なスキルが必要で「左官屋さん」と呼ばれる様に、職人としての地位も確立されている。
また、手仕事の残る風合いある仕上げが流行っていることもあり需要は多い。
⑦電気設備工事
「電気工事費」は照明器具やその配線、分電盤の設置が主な工事項目となる。明細をみると⑥−1天井面配線用レースウェイ施工工事が高くなっている。
レースウェイとはテールを天井下に張りめぐらせて、移動可能なコンセントを設置し、どこにいても電源が自由に確保できる様にした仕組みのことを言う。
壁コンセントや、床埋め込みコンセントの場合、コードが床に出ててきてしまうため、危険であるが、レースウェイを使えばその様な問題も解決できる。ドライヤーなど多くの電気機器を使用する美容院にとっては必須の仕組みだ。
⑧給排水設備工事
「給排水設備工事費」は、厨房や洗面所、水回りの給水及び排水管の工事となる。飲食店や水やお湯を使うサービス業は工事費の比率がどうしても高くなる。
⑦−1給湯配管工事と記載されている通り、美容院の場合は、ボイラーから直接お湯専門の管を通す必要があるため、その分工事費用は高くなる。
⑨衛生設備器具工事
「衛生設備器具工事」はトイレの便器や洗面器、水栓などの工事費だ。また水回りの小物、トイレットペーパーホルダーやタオル掛け、手すり、ウォシュレットなども含まれる。身近に使うものなので理解しやすいだろう。
⑩ガス設備工事
「ガス設備工事」はガス配管と給湯器、ボイラーの設置が主な工事項目となる。都市ガスとLPガスの2種類がある。都市ガスの場合は本管から、LPガスの場合はLP容器から、各設備へ引き込む。
⑪空調設備工事
「空調設備工事」は、空調機(エアコン)の設置工事だ。⑩−1天井カセット型エアコン(天カセ)は最も一般的もので頻繁に使われている。天カセはそれ自体の価格も高いのだが、重要が重いため、設置工事に手間がかかる。
冷媒管は室外機と本体の間で液体や気体のやりとりをする管のことだ。
⑫化粧金物工事
「化粧金物工事」とは目に見える金属の工事のことを言う。「化粧」とは建築業界では仕上げのための施しを意味する。金物とは金属のことだ。①軽鉄工事は目に見えない部分(壁に隠れる)のため化粧金物とは言わない。
⑫−1各所クツズリとは、扉の床面に設置される金属で、ドアの気密性を上げたり、音漏れを防ぐために設けるものだ。耐久性の問題からステンレス製のものが良く使用される。
⑬塗装工事
「塗装工事」壁や床、天井、建具、配管類の仕上げの塗装工事のこと言う。工場で塗装する場合は含めない。パテで下地を作って、その上に仕上げのペンキを塗る形となる。
⑭内装装飾工事
「内装装飾工事」とは内装の仕上げ工事の事を言う。単に内装工事と言うこともある。また「左官工事」や「塗装工事」は同じ仕上げ工事でも別工事項目として扱われるので注意しよう。
天井や壁であればビニルクロス貼り、床であれば、ビニルタイルやタイルカーペットが主な工事内容だ。
⑮ガラス工事
「ガラス工事」は開口部やパーティションとして利用するガラスを設置する工事となる。ガラスは建築材料の中でも単価が高く、使用するガラスの量で工事費は大きく変わる。⑮−1シーリングはガラス同士及びガラスと建具の隙間を埋めるため素材だ。
⑯サイン工事
「サイン工事」は所謂看板工事のことだ。また看板以外にも室名のピクトサインなども含まれる。飲食店、サービス店舗問わず集客に欠かせない重要な工事だ。
外壁のサインには箱文字、切り文字、カッティングシートがあり、後者ほど値段は安くなる。箱文字は金属立体的にして加工したもの、切り文字は金属板を切り抜いたもの、カッティングシートは金属プレートに文字をカッティングしたシートを貼り付ける方法だ。
また、サイン用の照明は内照式と外照式があり、内照式の方が費用は高いが、照明が外部に露出しないので、スッキリとしたデザインとなる。
⑰既成家具工事
「既成家具工事」は既成品の家具の設置工事だ。配置するだけであれば、ご自身で直接購入した方が安くなるケースがあるので、見積もり比較は必ず行おう。
⑱雑工事
「雑工事」の内容は様々だが、今回の場合は、引き渡し時のクリーニング代となる。自分で掃除をするという意気込みのある方は自分でやればこの分の費用は削減できるが、手間を考えるとあまりおすすめできない。潔く業者にお願いするのが良いだろう。
⑲諸経費
⑲−1現場管理費は現場での現場監督及びその他社員が下請業者への指示や打ち合わせを行うための費用となる。⑲−2現場経費は現場管理において必要となる物品購入や交際費などの費用だ。
また⑲−3事務所経費は今回の工事で必要となる図面作成費や見積作成費などになる。
⑲−4運搬経費は資材等の運搬費となる。一般的に諸経費は工事金額の10〜20%となることが多い。この数値が極端に多い場合は注意が必要だ。
最後に
以上で内装工事の見積書の各項目がどの様な工事なのか、どの程度の費用がかかるのかがイメージできただろう。これからいくつもの工事を発注する経営者として、見積書を見る目を今回の記事をベースに養って欲しい。
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