新規経営者向け、事務所、オフィス開設における融資及び資金調達方法のポイントについて
これから起業し、新たに事務所やオフィスを開設しようとしているあなたにとって、最も大きな問題は、開設費用をどこから調達するか、という問題では無いだろうか。
開設資金のうち50%程度は自己資金で賄うのが一般的な常識ではあるが、開設資金は最低でも1,000万円以上必要となる。ということは、500万円以上の資金はどこかから調達しなければならないということになる。
今回の記事では、この様な新規経営者であれば、誰もが直面する問題について分かり易く解説させて頂く。
目次
資金調達にはどの様な種類があるか?
資金調達方法は主に下記の3つの方法がある。①「出資者を募る」②「公的融資を利用する」③「民間金融機関からの借り入れ」だ。
①は会社運営に必要な資金を他人から出資してもらうことであるが、よほど人脈があるか、ビジネスモデルが魅力的で無い限り現実的では無いだろう。
③については銀行やノンバンクなどからの融資だが、こちらも既に実績があるなど、創業時の借り入れには厳しい条件がある。
続いて②については、創業したばかりの起業家専門に用意された融資制度「創業融資制度」というものがあり、最もよく利用される資金調達方法になる。
創業融資制度にはどの様なものがあるか?
創業融資制度はいくつかあるが、最もメジャーなのものが、日本政策金融公庫の「新創業融資」「中小企業経営力強化資金」「市区町村制度融資」と地方自治体による「制度融資」だ。下記にそれぞれの特徴をまとめてみる。
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自己資金割合 | 金利(年利) | 審査の早さ | 保証人、担保 | メリット | 向いている人 | |
日本政策金融公庫新創業融資 | 1/10 | 2%台 | 1ヶ月以内 | 不要 | 最短1週間程度で融資が下りる。 自己資金が少なくても良い。 保証人、担保不要。 |
とにかく早く資金が費用な場合 (新たにオフィスを開設する時など) |
日本政策金融公庫中小企業経営力強化資金 | 無し | 1%台 | 1ヶ月以内 | 不要 | 自己資金が不要。 保証人、担保不要。 認定支援機関のサポートが必須。 |
とにかく早く資金が費用な場合 (新たにオフィスを開設する時など) 自己資金が無い場合 |
市区町村制度融資 | 1/2 | 1%未満 | 2ヶ月程度 | 必要 | 金利が低い。 融資が下りるまでの期間が長い。 ある程度の自己資金が必要。 |
自己資金が豊富にある場合 資金調達に急いでいない場合 |
都道府県制度融資 | 1/2 | 2〜3% | 2ヶ月程度 | 必要 | 融資が下りるまでの期間が長い。 ある程度の自己資金が必要。 (東京都の場合は不要) |
自己資金が豊富にある場合 資金調達に急いでいない場合 |
創業融資制度の審査基準は?
公的機関の創業融資は通り易いのは間違いないが、一定の審査基準がある。この基準をクリアしていなければ、どれだけ少額であろうとも融資を受けるのは厳しいだろう。下記に審査の基準を項目別に記載するので確認頂きたい。
自己資金について
自己資金比率が決められている場合は、自己資金がどの様に調達されたものなのかがチェックされる。例えば親から借りたお金は自己資金と見なされずに借り入れと見なされる。
これを確認するために、代表者個人の過去1年分程度の通帳コピーの提出が求められることが多い。急に大金が振り込まれるのはやはり怪しいので注意しよう。起業にむけてコツコツと資金を貯めてきた資金管理能力が問われるのだ。
経験及び能力について
新創業融資は、これから起業する人に対しての融資となるので過去の実績を参考にすることができない。そのため審査基準としては、代表者が今まで経験してきた業務の経験や知識と、これから起業する会社の業務内容がマッチしているかがポイントとなる。
全く経験の無い業界で起業する場合は、創業融資を得るのは難しいだろう。また個人の信用情報も大きなポイントとなる。また、公共料金や税金の滞納や消費者金融からの借り入れがある場合は、融資はまず不可能だろう。
返済能力について
実際に返済が可能か、という点も審査のポイントとなる。新創業の場合は過去の実績が無いので、事業計画書で表現することになる。具体的には、税引き後利益に減価償却費を加えた数値が年間の借入返済額を上回っているかがポイントになる。
資金の使い道について
各新創業融資制度には限度額が設けられているが、実際にその使いみちが提示できなければ融資を受けることができない。事務所開設の場合は、物件取得費やオフィスの内装工事費用などの見積書がそれに当たる。物販事業を行うのであれば倉庫の費用などももちろん含めることが可能だ。
審査突破の鍵は事業計画書
融資審査で必ず提出を求められるのが事業計画書だ。事業計画書のポイントは要点を簡潔に記載することだ。何十枚もの事業計画書を進めるコンサルもいるが、それはナンセンスだ。
審査担当者も多くの案件を抱えていて、その様な資料を読む時間など無い。よってA4用紙2枚程度でポイントを絞って纏めることが重要となる。事業計画に記載する項目と記載内容の要点を下記に示したので確認頂きたい。
項目 | 項目 |
代表者の経験 | 職務経験で今回の事業に関連する成果を記載する |
市場調査 | 市場の分析結果とその売上予測を明確にする |
ターゲット | ターゲットは出来る限り絞り込む |
独自性(UPS) | 他社とどの様な違いがあるのかを明確に |
マーケティング | どの様にして顧客を獲得するのかを明確に |
売上計画 | 起業後数年の売上、粗利の想定値を記載する |
資金収支表 | 起業後1年間の毎月の資金収支状況を記載する |
思うように融資が降りない場合はどすればいいか?
公的融資は民間に比べて融資が通りやすいのは事実だが、税金を使った融資ということは忘れてはならない。各項目が1つでもクリアできなければ融資を受けるのは厳しいだろう。また、一度審査に落ちると、原則として再度同じプランでの融資は下りない。
だからこそ、事前に入念に準備を進めておく必要があるのだ。今回の記事を参考に、税理士などの専門家とも相談しながら融資獲得の時準備を進めて欲しい。
また、現実的には必要資金の全ての融資を得のは困難だ。日本政策金融公庫でもよほどの経営実績がなければ200〜300万円程度が限界だろう。新規創業であれば尚更である。
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